霊猫あーちゃんとの生活 episode ZERO #最終話

2016年11月22日  午前9時22分  ブゥが死に             ました。

 

今から考えてみれば体調を崩していた症状があったのかもしれません。しかし明らかに具合悪さを感じさせる出来事は何度、思い出してみても心当たりがありませんでした。強いて言うなら3〜4日程前に外階段の踊り場でおそらくブゥが吐いたとおもわれる跡があったことと前日に朝帰りした際にちょっとだけ鼻水を垂らしていて風邪気味だったのかなあ?くらいでした。食事もいつも通りにたいらげ、いつも通りに甘えて来て私の布団で昼寝していました。その日は私の仕事が休みでしたので普通にブゥと一緒に過ごしていましたがブゥの異常には全く気がつきませんでした。

猫は大変に我慢強いと言われています。猫に限らず他の動物も病気で動けなくなるのは即、死を意味します。だから具合が悪くてもギリギリまで我慢してしまうそうです。私が完全室内飼いにこだわっているのはこのブゥの体調不良を見抜けなかった後悔があるからです。人間が衣食住を管理して例え姿が見えなくても探せば必ず家のどこかにいる。そういう環境下にあれば食欲、オシッコの量、便の状態、普段の生活の些細な変化を知ることが出来ます。違和感を感じたら即、獣医さんにかかることが出来ます。

ブゥは飼い始めてまだ1ヶ月で室内飼いには移行していませんでした。ブゥ用の室内トイレは購入済みでしたが使う気配もなく相変わらず外で用を足していました。2日程度帰って来ない日も有りましたが食欲は旺盛で特に変わった様子もありませんでした。しかし一旦、私の目の届かない所に行くと食べた物は吐いていたかもしれないし下痢をしていたかもしれません。何かしらの前兆はあったはずなのに全く気付くことが出来ぬままに運命の日を迎えてしまいました。

その日は11月の下旬にしては寒い日でした。夜中、トイレに起きた時に何の気なしに猫ハウスを覗きました。ブゥの姿が無かったことを覚えています。「また、夜遊びか?」そう思い布団に戻ります。栗頭と遊び歩いている、その程度にしか考えていませんでした。夜が明けいつもなら食事の催促をするブゥの姿が無いことに気が付きましたが、まだ夜遊びから戻っていないのか?しょうがない猫だなと思いつつ猫ハウスの保温シートをたくし上げます。ブゥが丸くなって寝ています。「ブゥ居るんだ? 何だお腹空いてないのか?」ブゥの呼吸で身体が上下しています。ここで始めてブゥの異変に気が付きます。ハウスの中がブゥの下痢で汚れていました。猫は決まった場所以外では大小便はしません。ブゥは自身が決めたトイレに行く体力もない程、衰弱していました。

一瞬、ギョッとしましたが、まだ私はそれほどの危機感を持ちませんでした。それはブゥが成猫でちゃんとした食事も寝場所も確保して充分に体力が有るだろうという思い込みと昨日まで全く変わらず普通に過ごしていたことから、これは一過性の体調不良でちゃんと暖かくして眠れば直ぐに元気になると、ましてたった1日足らずでそんな重篤な状態になるはずがないと今、考えれば非常に甘い楽観的な考えでしたがもっと過酷な環境で生き抜いている野良猫が多くいるのだからと様子を見ても大丈夫かなと思ってしまいました。

汚れてしまった毛布をキレイな物に変えて新しいアルミ保温シートを引き直しました。そこに使い捨てカイロをひき詰めて暖を取れるようにしました。寒い日でしたがこれで十分に暖かく過ごせそうでした。ブゥの汚れたお尻をキレイにして毛布の上に寝かすと呼吸の早さは相変わらずでしたが大人しく眠ってくれました。私は少し安堵して自分の朝食をとることにしました。会社に行く準備をしつつ今日1日様子を見て会社から戻ってきてから動物病院に連れて行くかの判断をしようなどと考えていました。

会社に向かう前にブゥの様子を見ようと猫ハウスを覗いた時でした。今でも脳裏から焼き付いて離れない光景です。ブゥがずっと鳴きながらフラフラと私に歩み寄ってきます。『置いていかないで!! 一緒にいて!!』そう聞こえました。

何故か分かりませんがハッキリと確信しました。

〈ブゥの命が尽きかけている。ブゥはその瞬間を私の手の中で迎えることを望んでいる〉

私は直ぐに猫用ケージの準備をしました。ここで直ちに動物病院に向かうという判断はまったく考えていませんでした。ブゥは自分の命の期限を知っていました。それが後、残り僅かだということも。

急いでブゥをケージに入れ助手席に置きました。直ぐに車を発進させ会社に向かいます。暖機運転も余りせずに発進したので温風が直ぐに出なかったのがもどかしかったことを覚えています。助手席に置いたケージの中からはブゥは私の顔が良く見えないらしく不安から弱々しく鳴いています。ブゥが鳴く度に「ブゥ、もう直ぐ会社に着くからね」と声を掛け続けました。会社に着くと同時にエアコンのスイッチを入れ温度設定を最高にしました。最高にしても直ぐに暖かくなる訳ではないことは知っていましたがブゥの為に直ぐに暖かくしたいと焦っていました。

その日は終日、会社の店番は私一人でした。急ぎの仕事も入っていません。会社を開く為の準備を大急ぎで行い会社にあった小型犬用のベッドを倉庫から持ってきて事務所の床に置きブゥを寝かせました。予備用の石油ストーブも着けて事務所はだいぶ暖かくなってきました。ブゥの体を左手で撫でながら奇跡が起こることを祈りました。ブゥは丸くなって寝ていますが呼吸は荒くなっています。「ブゥ 頑張れ」もうそんな言葉くらいしか掛けられません。

最期の瞬間がやって来ました。

ブゥの軀が小刻みに痙攣し始めました。ブゥは最後の力を振り絞り頭を持ち上げその大きな瞳で私の顔を見て鳴きます。その直後でした。ブゥの見開らかれた瞳から【生の光】がロウソクの炎を吹き消すが如く消えたのです。

私はその瞬間、スイッチが入った如く泣きました。つらいとか悲しいとか切ないではなくただただスイッチが入って号泣しました。鳴咽が激しく呼吸するのもままならない状態でした。

霊魂学を学ぶ者として肉体の死は単なる通過点に過ぎないと理解していたはずなのに涙を止められませんでした。

その時の状況を記したメモがありました。

「11/22 AM9:22 会社の事務所にて体を撫でられながら逝く最期に1回鳴き余り苦しまなかった享年九ヶ月」

byゆたんぽ

 

 

霊猫あーちゃんとの生活 episode ZERO #最終話」への8件のフィードバック

  1. いきなり予想外の展開で先を急いで読んでしまいました。

    近親の死は、霊魂学徒と言えども悲しいものです。

    ところで、最終話となっておりますが、私の勘違いでなければ「霊猫あーちゃん」が登場しなかったように思えたのですが。

    私としては、てっきりブゥが改名すると思っておりました。

    • あーちゃんは今、家にいる別の猫です。これはあーちゃんが家に来る前の前日談なんです。だからエピソードゼロです。ブゥが居なかったらあーちゃんも絶対にうちの子にならなかったのでブゥの話はしたかったんです。次回からあーちゃんの生活の本編が始まります。

  2. 飼い主さんに見守られながらお別れなんて、悲しいけれど、ブゥちゃんは幸せな猫ちゃんですね。
    私もペットを飼っている者として、最後の時はそういうお別れでありたいです。
    引き続き、あーちゃんのお話を楽しみにしています!

    • 心の準備と覚悟が出来ているのと出来ていないのとは全く受けるショックが違いますね。
      前回の第8話の最後が今回の話の伏線でした。

  3. ブゥちゃん死んでしまったんですね~(ノTДT)ノ
    でもゆたんぽさんのそばで死ぬ事が出来て良かったと思いますよ~( *´艸`)

    • 願わくばもう少しだけ長生きしてして欲しかったです。
      でも死の瞬間に立会え、一人孤独に逝かせなかったことが唯一の救いでした。

  4. ブゥちゃん亡くなっていたのですね。ほんとに早すぎます。
    でも、修行者に看取られて逝くのはネコにとって幸せだったろうと思います。

    • まもなく2年になります。
      ブゥは私の猫に対する偏見を取り除いてくれた稀有な野良猫でした。
      ブゥが居なかったら猫を好きになるどころか無関心なままでしたね。
      短い一生でしたがブゥの生は何かしら意味があったと信じたいですね。

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