霊猫あーちゃんとの生活 #020

ー  あーちゃんの大脱走  後編  ー

あーちゃんの3回目の脱走劇はとある夏の暑い日でした。この日は過去2回の大脱走と違い朝から私が居ました。私が住んでいる場所は菅平高原の裾野で準高地までとはいかないまでも人口が多い市街地中心部よりは必ず0.5度から1.0度くらいは気温が低いのです。冬は寒いですが夏は比較的快適に過ごせます。窓を開けておけばまあ何とかエアコン無しでも過ごせます。

しかしあーちゃんがウチの子になってからは真夏でも全ての窓を開け放つことが出来なくなりました。過去2回のあーちゃんの大脱走劇を踏まえ当然、あーちゃんが外に出てしまう可能性のある窓は厳重な警備がなされています。なんせ前科2犯ですから!

あーちゃんは家財道具に一切イタズラはしないのでウチにはあーちゃん用の大型ケージは有りません。ほぼ家の中を自由に闊歩しています。ほぼというのは初めて猫を飼うことになり生活圏を完全に一緒にすることに母親が難色を示したからです。あーちゃんが入れない(入れない)エリアを設けたのです。今回の大脱走ミステリーを語る上でこのあーちゃんが入れない侵入禁止エリアの説明が必要不可欠になってきますので文章では伝わりにくいかとは思いますが出来るだけ分かり易く説明してみます。

まず2階は全ての部屋があーちゃんは自由に行き来できます。最初は私の寝室はあーちゃんを入れないようにしていましたが今はあーちゃんが夏は布団の上、冬は布団の中で寝るようになってしまった上に私の留守中には勝手に扉を開けて入り込み昼寝をしているのでもう諦めました、よって2階はあーちゃんの専有エリアです。2階と1階をつなぐ階段もあーちゃんは行き来できます。うちは2階部分は過去に増築したので階段と1階の接合部は扉があり閉めることが出来ます。この扉は昼寝は開け放しておいて夜間は締め切ります。扉を出ると廊下がありそれぞれ玄関とあーちゃんが2度、脱走した物干しにつながる庭に面した廊下になります。

あーちゃんが1階で活動出来るのはこの廊下のみです。玄関に向かう廊下は大型犬用の柵でとうせんぼしてその柵を支柱にして塩ビのパネル板を固定してあります。過去、あーちゃんはこの部分を乗り越えて何度も玄関に侵入してきましたがその都度、改良を重ねて玄関への侵入は無くなっていました。とにかく玄関はあーちゃんがいることを知らずに外から開けると速攻で逃げ出してしまうので廊下を潰して行き止まりにしました(今はあーちゃんのトイレスペースになっています)。もう一つ玄関とは別に人が入れる入り口として階段わきの入り口があります。これは増築時に階段下のスペースを物置きにしたので物置きに入る外からの扉、階段わきに中に入る扉と二重扉になっていますので階段にあーちゃんがいても外側の扉を閉めておけば物置きにあーちゃんが入っても外には出れません。私は主にここから出入りしています。

大分、話しが混み合ってきましたが1階であーちゃんが入れないスペースをおさらいします。まずは玄関、玄関を入って右側に洗面所、トイレ、浴室があります。左側に階段と庭の物干しに向かう廊下がありますがこれはあーちゃんが玄関に来ないように行き止まりにした場所です。先に進むとキッチン、左側にお茶の間と応接間が並んであります。ここまでがあーちゃんの侵入禁止エリアです。その並びのお茶の間と応接間の障子を挟んだ廊下が物干しに出られる廊下でトイレと並び1階で唯一、あーちゃんが自由に使えるスペースです。

(はあ  疲れた)

とにかく2度の脱走であーちゃんが外に出る経路はほぼ把握されているはずでした。3回目の大脱走の謎が解明されるまでは

その夏の暑い日、私は自分の部屋に居ました。本を読んでいたのかテレビを見ていたのか記憶はありませんがとにかくのんびり過ごしていました。家には母親とあーちゃんがいました。

突然、私の携帯電話が鳴ります。発信は母親の携帯からでした。(何だよ下に居るなら普通に呼べばいいのに)電話に出ると「アリアが外にいる!!」とのことビックリして階段を降りてまたいつもの物干しに出るサッシから出入りの瞬間を狙って庭に出たのかとサッシを見ましたがしっかり施錠されています。通風の為に網戸にしてあるところもあーちゃんが野良猫のハイジとケンカして爪を立てないように立て掛けたパネルがはまっています網戸も開いていません。

庭には1匹のキジトラがいました。あーちゃんに良く似た体型と模様、顔もソックリです。何とお腹のタルタルまであるではありませんか!

(いや!  あーちゃんだ!  アレ!!)

人間はあり得ないことがあると思考が停止して現実から逃避するのですね。聞けば母親も茶の間でテレビを見ていて何気なく庭に目を向けたらキジトラを見つけて初めはあーちゃんと良く似た猫がいると思ったそうです。慌てて母親と2人で庭に飛び出し多少の苦労はしましたが何とかあーちゃんを捕まえることに成功しました。

しかし大きな謎は残ったままです。あーちゃんを捕まえた後、あーちゃんの脱出経路を特定しようとしましたが全ての扉が2階を含め施錠または対策を施してあったか、あーちゃんが物理的に出られない扉だったのです。事態は迷宮入りの様相を呈してきました。しかしあーちゃんが外に出たのは紛れもない事実です。賢いあーちゃんのことですから対策を施さないとまたほとぼりが冷めた頃を見計らって必ずやります。可能性として浮上したのが最初の写真にある2階の窓です。

この窓、あーちゃんが私を見送ったり帰りを待って居たりするキャットタワーのてっぺんから覗ける窓なのですがご覧の通り網戸がありません。事件当時も通風の為に全開になっていました。しかしこの窓の下には地面まで足場になるものが何もありません。約3メートルの高さがありますがあーちゃんがダイブしたと思われます。そう考えた時、丹念にあーちゃんの体を調べました。

(良く怪我しなかったなぁ)

あーちゃんは猫とは言えお世話にも運動能力が高い方だと言えません。中の下くらいでしょうか。でも大人しいとは言え猫の野生があったのかと、釈然とはしなかったもののそう結論づけるしかありませんでした。今後はこの窓全開禁止という新たなルールが生まれました。

しかし2週間後、急転直下、事態は動き出します。大脱走には至らなかったものの玄関にいるあーちゃんを私が見つけたのです。全ての謎が解けました。

私は廊下と玄関を隔てた塩ビパネルを丹念に調べました。一部固定が甘くあーちゃんが体当たりをかますとあーちゃんが通れる隙間が生まれる部分を発見しました。あーちゃんはここから玄関に出たのです。しかし当日、玄関は施錠されていました。それは確認済みです。玄関以外で更にあーちゃんが外に出られる窓?窓は開いていましたがその全てに網戸が取り付けてあります。

(あーちゃんの筋力で開けられる網戸か?)

一つ心当たりがありました。洗面所の洗濯機の横にある網戸です。ドラム型洗濯機なので洗濯機の天板に乗れば丁度いい高さです。私は注意深く網戸の網目を観察しました。

ビンゴです!

網目の一部にあーちゃんが爪を引っ掛けて広がっている箇所を発見しました。高さもドンピシャです。

全ての謎は解けました。

その後、パネルの隙間を閉じ網戸もあーちゃんに開けれない様に対策を施して一件落着です。

(あーちゃん恐るべし、侮るなかれ!)

4度目の大脱走ですか?

私が閉め忘れた物置きの扉に気づかず、階段わきに入る扉を開けたらそこにあーちゃんがいました。開けた瞬間にあーちゃん一目散に外に飛び出して行きました。

続く

byゆたんぽ

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霊猫あーちゃんとの生活 #020」への3件のフィードバック

  1. 外にあーちゃんを見かけたときの、ゆたんぽさんが二度見している姿が目に浮かびます(笑)

    それにしても、あーちゃんは冒険家ですね。

    頭使ってるんですね。

  2. あーちゃんの行動を追っているゆたんぽさん、探偵さんみたいです~(^^)

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