【続】本当にあった不思議な話。

お盆の季節になると思い出す不思議なお話があります。

これも『契山館』の修行会員になるまだずっと前のお話です。しかしもう既に社会人になっていた時に実際に経験した出来事なのですが人によっては十分、怪談話だと言われるかもしれません。しかし別に私が怖い想いをさせられた訳でもないのでいつでも話すときは起きた出来事を淡々と語るのみなのです。

私は以前、ビルメンテナンス会社の営業の仕事をしていました。ビルメンテナンスなどと言うと聞こえは良いですが田舎では簡単に言うと色々な場所を依頼されて掃除をするお掃除屋が主たる業務に当たります。しかしお金を貰って掃除を生業とする以上、プロ仕様の機械なども導入して一般的な清掃を超えた仕事をする必要があります。その為、効率的に仕事をこなす為には清掃対象の場所や施設に人が居ない時間を狙って作業をする必要があります。そうした理由からどうしても大掛かりな清掃作業は深夜とか施設が休日のときに限られるのです。

営業と言えば逆に人が居ない時に訪問しても意味がありませんので夜や土日祝日は必然的に就業時間外だったり休みになるのですがそこは地方の零細企業のことですから清掃作業員の手が足りない時はよくヘルプの声がかかりました。会社は休日出勤手当や時間外手当をよほど払いたくないらしく社員の不満が出ない様に代休(休日の振替)の取得だけは口うるさく指導していましたので休日数が減ることはありません。なので私はいつも快く休日出勤を受けていて清掃作業員の頭数に入ることが珍しくはありませんでした。

ある時、歯科医院の清掃作業のヘルプに呼ばれ休日出勤を受けました。歯科医院と言っても個人住宅を兼ねた造りの住宅街の真ん中にある歯科医院です。この会社は当時、個人宅の清掃は殆ど受けていませんでしたので私も記憶に良く残っていた現場でした。1Fに歯科医院と扉一枚隔てて家族の居住スペース、その居住スペースから2Fにつながるやはり家族の為のプライベートな部屋から構成されていました。2Fは主に書斎として使用していたようでした。1Fの歯科医院と居住スペースは扉一枚で仕切られておりここを通らなければ外側から別々の入り口をグルリと迂回しなければ医院部分と居住スペースの往き来は出来ない構造になっていました。

この歯科医院部分の清掃が今回の仕事でした。家族は清掃作業があるということで院長先生を含めて誰もいません。家玄関と医院の入り口の鍵を預かり朝から私を含め4名の作業員が清掃作業に当たりました。作業は順調に進み後は診察室の床ワックスをかければ終了という段になりました。

時間はお昼頃でした。この会社の休日出社のルールとしては作業自体が終日掛からなかったとしても代休はちゃんと1日分取得させてくれます。だから作業が早く終わるとすごく得した気分になったなったものでした。ワックス掛けは乾燥時間もあるので大概、最後の作業になります。全体の作業工程を理解していない単なるヘルプの私でもワックス掛けが終わるとほぼ終了ということは知っていました。そして家族が居ないということは乾燥時間は考える必要はありません。最後のチェックをしたら施錠して作業終了です。

「今日は午後からフリーだぞ!何をして過ごそうか?」などと考えつつ作業を診察室で行なっていた私が見たのは歯科医院の入り口から居住スペースを隔てる扉につながる廊下を歩く作業員とは別の人物でした。この時は私を含めた3人は室内で作業していました。もう1人は外の医院の入り口付近で作業していました。室内では私の直ぐ近くに1人、少し離れたところに今、正にワックスをかけている作業員が1人いました。

私が最初に思ったのは「◯◯さん入り口に居るならちゃんと声を掛けて制止くれなきゃ」でした。とにかくワックスは乾燥するまでは通行禁止です。足跡が付くと作業がやり直しのなのです。でも居住スペースに向かう廊下のワックス掛けは終了しているので今は目くじらを立てることもありません。私はてっきり外出している歯科医の家族が忘れものでも取りに来たあるいは清掃作業の進捗状況を確認しに来たのだと考えました。

入って来た男性はおじいちゃんと言うほど老けた印象ではなかったもののそれなりの年齢には達しているであろうと感じさせる頭の禿げた小太りの男性でした。おそらく院長先生だと思いました。がしかし私は院長先生はもっと若い人だと勝手に想像していました。と言うのも居住スペースを見て感じた生活感が若い人のそれだったからです。おそらく今の院長先生のお父さん、つまりおじいちゃんだとすれば風体から受ける印象は合点がいきます。

私は「お世話様です!今作業中でもう間もなく終了します!」と声を掛けました。

そのおじいちゃんは私に顔を向けることもなく、視線を向けることさえないまま居住区に入る扉に向かって行きました。そのおじいちゃんを見たのはこの声を掛けた時が最後でした。私の直ぐ近くに居た作業員はこのおじいちゃんも私が声を掛けた場面も一緒に見ています。外で作業をしていたもう1人は誰も見ていませんでした。人が入って行くのも出て来るのも見ていないそうです。私から少し離れていた同じ室内で作業していた3人目の作業員も私が声を掛けたので誰かがやって来たのだろうと思ったそうですがやはり誰も目撃はしていないとのことでした。

突然、口から血を滴ららせて襲って来られたとでも言うならこの世の物ならぬ存在と言う想像も出来ましたがこの時点ででは人がフッと居なくなった程度の軽い気持ちでした。街中で知らない人とすれ違った程度の話です。

作業も無事終了して最後の確認をした時です。私は今回の清掃範囲内ではない居住区の施錠状況を見てまわっていました。2Fの書斎らしき部屋の確認をした時です。鴨居の上に一枚の写真が額に入れられて飾られていました。意識することもなく写真に目を向けると。

「あ!  さっきのおじいちゃんだ!」

顔の輪郭、禿げた頭、小太り加減、年恰好、同一人物です。「そう言うことだったのか?」不思議と怖いとは感じませんでした。声を掛けた私にいちべつもくれなかったことから目的は私ではなかったのでしょう。何か他の理由があったのだと思います。

そこで私は思い出しました。「今日は迎え盆だ。」

その後、写真に写っている人物が何者で今、どうなっているのかは調べることは出来ましたがそれはしませんでした。全てハッキリさせて怪談話としてオチをつけるよりも何やら不思議な話として曖昧にして置いた方が良いと考えたからです。もう10年以上も経過して違う環境に身を置いた今となっては真実は闇の中です。

終わり

byゆたんぽ

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【続】本当にあった不思議な話。」への4件のフィードバック

  1. 話し方によっては、本当に怪談話ですね(笑)巷の霊能力者なら何と言うのでしょうか?

    霊魂は見えないので、二人分の間気を使ってよりリアルに写真の人に近づけることができたのでしょうか。
    写真に似せた姿を見せたり、ふと写真の方を見させる、「盆迎え」と言うシチュエーションがまた手慣れた感がありますね。

    私の憶測は、捻くれているのでしょうか(笑)

  2. ゆたんぽさんだけではなく、複数の方が同じ姿を目撃されたということは、ゆたんぽさんにヴィジョン見せたのではなく、間気を使って可視化させた可能性が高いのでしょうね。

    歯科医院に間気がいっぱい落ちている、などという可能性もあるのでしょうか?

    目的は、やはり怖がらせる、という悪戯なのでしょうか・・・。

    そうだとすると、ゆたんぽさんが怖がらなかったので、悪戯のやり甲斐がなかったでしょうね。

    でもそうなると、その写真のご本人の霊魂以外の、悪戯好きの霊魂の仕業、という可能性もあるのでしょうか?

  3. 怖い話ですね~((((;゜Д゜))))ブルブル
    幽霊に悪戯されたくなければ、幽体を成長させてください(*≧∇≦)b

  4. 最近の怪談ものって、ただ気味の悪いホラー話が多くて、こういう「あなたの知らない世界」的な話は、細々とネットの世界でのみ盛り上がっている感じですよね。
    ネットを見ていると、人間の不思議を求める人はいて、需要はありそうなのですが…。
    暑い夜にゾクゾクしたいのなら、「人類は消滅すべきか」「真実を求めて」あたりを是非オススメします!

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